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深海/浮上/おはよう/陽光/歩み

.28 2013 .+*詩*+. comment(0) trackback(0)


 深海には光が差さない。
 けれど私は光を知っていた。
 最初からここにいたわけじゃない。
 もっと、明るくて、幸せに満ちた……
 陸と呼ばれた世界。
 望んでここに来たのか。
 深海にいた理由は分からなかった。
 仰向けに。
 空を仰ぎ続ける。
 そこに救いがあるみたいに。
 あるいは私がヒトだったから。
 その向こうには光――希望がある気がして。



 浮き上がっていた。
 最初は誤差としか思えないくらいに。
 僅かに身体は浮き上がっていた。
 何が起こったのか分からない。
 ゆっくりと。ふうわりと。
 ピアノが奏でる音のように。
 儚さを添えて。
 望んだ空が今は少し、怖い。
 そこには本当は何があるの。
 知っていたはずの答えが疑念に埋もれる。
 記憶にあった陸が本物か疑わしい。
 それは私の見た幻想で。
 本当は無いんじゃないかと思ってしまう。
 けれど浮上は止まらない。
 願った通りに、静かに上って行く。
 光を感じる。



 久々に見た――気のする世界。
 陸が見えた。
 私は何故ここを知っていたのだろう。
 水ではなく空気に満ち満ちた世界。
 水の中で生きていたことも不思議で。
 空の下で生きていることも不思議だ。
 長い眠りから覚めたお姫様のように。
 世界の瞬きを、命の鼓動を。
 私は左胸に感じた。
 遠い昔、それがクラシックと呼ばれる前。
 脈打つ感覚は、古からの呼び声。
 再び生きていると自覚させる、震え。
 私は取り戻した。
 ヒトとしての、命を。
 眠りから覚めたのだから。
 まずは、おはようを世界に。



 やわらかな光だった。
 ほんのりと感じて行った光の正体。
 それは太陽と呼ばれたものの分身で。
 冷え切った身体をじわじわと温める。
 ヒトにはぬくもりがある。
 誰の言葉だったろう。
 初めて腕を動かした。
 手のひらを表裏に。
 透かした陽光はまぶしかった。
 直視するにはきつすぎる。
 けれど笑ってしまう。
 ふふっとこぼれる。
 私はどうやら太陽が好きらしい。


 
 ようやく私は立って。
 ようやく私は歩き出した。
 人魚の尾ビレではなく、脚がついていた。
 右に足を出せば右に傾き。
 左に足を出せば左に傾く。
 前に足を出せば前に傾き。
 後に足を出せば後に傾く。
 当たり前のはずのそれが、嬉しい。
 歩くって素晴らしいなんて、思って。
 私の中の忘れ去られた私がよみがえる。
 遠い記憶の中に消えて行った過去の自分。
 生きることを忘れた、生ける屍。
 そんな私の殻は、ようやく全て破れ去った。
 今はただ、再び生まれ落ちた私。



 こうして私はまた生きる。



優れた芸術家は完成像が描ければ、後は創り出すだけだと言いますが、俺にはそんなのまるで想像もつきません。
腕が動くままに描き出す。すると、作品が出来上がっている。完成像はほとんどありません。
今作の原動力になったのは、⑤~⓪へのカウントダウン。映画館とかで見かけるようなあのカウントダウンが、今作を生み出す最初の一歩でした。決して今回は内容から始まったものではありません。
けれど出来上がってみれば、沈んだ心が再生するまでを描いた作品になっていました。
まるで何かに取り憑かれたみたいに。
動き出した手は止まることがありません。
もちろんこれを駄作と割り切ってしまうのは容易いですが、元より俺は万人に受ける作品を書こうなどと思ったことは一度としてありません。
俺の書いたそれが誰か一人の心に届きでもすればそれは傑作となり得ます。
その作品が誰の心にも響かなければ――果たしてそんなことがあるのか、全人類に見せられるわけでもないですし、おかしな話ですが――、それはようやっと駄作になり得るんじゃないかと。
常に作品を書いていると、習作のように思えるものでも習作の域を超えてしまうことがあります。今作は俺の中では、習作以上の意味持ち得るようなものだなと、結論づけたいところです。

いつもより凝り固まったあとがきになりましたが、是非この作品に感じ入ってくれる方が一人でもいることを願いたい、そんな一心です。
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