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傷だらけの今日

.10 2015 .+*ショートノベル*+. comment(0) trackback(0)
0

「はは、そうだな」
 日付が変わる。23:59から、0:00に変わる時計。
 明日だった日が、今日になってやって来た。
 受話器越しに聞こえる声は、無機的で、無感動な声。何千時間か前は、有機的で、感動出来た。
 終わりの予感。それが、現実のものになる。そんな気がした。

 直感はやはり、正しかった。

1

 向いていた矢印が消えて、向けるべき場所も分からなくなって。それから、一ヶ月くらいが経った。
 進むべき所も見失った俺は、過去の自分の決意にすがって、今日という日を過ごしていた。
 大学に通って、バイトに行って。
 外に出るのは、後は精々買い物くらい。
 ほんの少し前までは、もっと別の用のために出ていたのに。それが当たり前になる日々を送りたかったのに、その願いは叶わなかった。それはあくまで非日常で、日常は相変わらず、味気ない日々。
 ベッドの上、膝を抱えて寂しげなメロディに耳を傾ける俺は、寂しかった。
 心も寂しく、見た目も寂しく。
 そうやって、ぼーっとしながら、消えて行く何かを、切なげに見つめる。
 悲しみはあった。でもそれは、浸り続けることは出来ない。失った時と、それから少しの間は感じられても、いつまでも感じることは出来ない。思い出す度に、朧気になって行くのが分かる。初めて味わったあの悲しみには、その後のどんな回想も及ばない。悲しみでさえ、色褪せてしまうんだ。
 喜びと幸せは、過去には無い。あったのかもしれないけど、それは今の心を満たすことは出来ない。追体験は出来ない。出来たとしても、浮かぶのは別の感情。
 前に進むには、それらを再び手に入れるためには、また出逢わなければならない。
 でもそれは、痛むこと。傷むこと。
 好きになることは、傷付くことだと思う。思うようになってしまった。
 何の因果か宿命か、俺の味わうのは、そんなものばかりだ。けれど、理性と経験が指し示す正しい解答を、俺はいつも選べないから。
 選ぶのは、本能と感情が導き出す不確かな――いや、間違いだということは、本当は分かっているはずなんだ――答えばかり。
 もっとちゃんとした恋だって、出来たはずなんだ。でもそれを、俺は選ばなかった。
 だってそれは、幸せじゃない、そんな風に思えてしまうから。どうしようもないから。俺が欲しいのは、運命だから。
 たとえ、これまでの人生の全てが、現実にあるのは現実だと突きつけていても。未来が不確定要素に溢れ続ける限り、運命の存在を信じずにいられない。人を、想いを、信じずにいられない。
 ふいに、流れていた歌がフェードアウトして、着信を告げるメロディが代わりに流れ始めた。
 怖かった。それでも。
 好きになることは、傷付くことだと思うから。
 でも、傷だらけの手で、掴もうとしなければ、手に入ることは有り得ないのだから。
 俺は電話に出た。

2

 傷だらけの今日。
 だからこそ。
 幸せになるべきなんだ。

3

「ありがと。……うん、じゃあ、また」
 口元を緩めて。
 また好きになろうと、決めた。
 傷付くかもしれないけど。苦しむかもしれないけど。
 喜びと幸せは、好きになることでしか、得られないのだから。




電話とかかかってこない(´・ω・`)
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