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泡沫の翼

.24 2016 未分類 comment(0) trackback(0)
 遠い所で、あなたが亡くなった。
 テレビに映ったあなたの写真は、記憶に残るあなたのそれとは随分違ったけど、面影は、確かにあった。幸せそうにVサインを作るあなた。もうこの世にはいないと言われても、信じられない。
 自宅マンションにいたところを刺されたらしく、同棲していた男の行方を警察が追っているところからして、まあ、理由はお察しだ。容姿も性格も良かったあなたには、たくさんの人が目をかけて、そして、目を付けていたんだろう。
 遠い日、あなたはいつもながらの優しい笑顔を浮かべて、天気予報士になるのが夢だと教えてくれた。そのために、進学する大学も決めて、高校の内から色々と先んじて学んでいるんだと言ったあなたの背に、俺は翼を見たような気がした。俺はきっと、惚れていたんだろう。
 高い目標を決めたあなたと、それなりの何かになれれば良いと思っていた俺とでは、どうあっても進む道は違っていて、高校を卒業してから、あなたの姿を見るのはおろか、名前さえ聞かない日々だった。宣言通り天気予報士になれば、いつかテレビで目にする日もあるんだろうなと、思っていた。
 けれど、あなたがテレビに映ったのは、あなたが亡くなったという報せを、別の誰かが告げるためだった。あなたが誰かに、天気予報を伝えるためでは、なかった。

 あなたに生えていたのは、泡沫の翼だった。

 俺に何かが出来たとは思えない。
 俺にあなたを救う力があったとは思えない。
 それなのに、心はどうしようもなく、苦しみに包まれた。あなたを想う心が、まるで自分の体の一部を失ったかのように、痛みを呼び込んだ。
 あなたがどんな人生を歩むかは、あなたの自由だった。どんな失敗をして、どんな苦労をするかは、あなた次第だった。けれど、俺はあなたに、成功して欲しかった。幸せな人生を歩んで欲しかった。
 失意の内に亡くなる姿なんて、想像もしたくなかった。
 俺はあくまでも、あなたの人生ですれ違った、小さな通行人に過ぎない。それでも、あなたの幸せを願う、拙いエキストラだった。
 それが、いけなかったのだろうか。
 あなたの翼を、見紛うことなく、本当は大したものではないと見抜いていれば、その腕を掴んででも、引き止めることが出来たんだろうか。
 いや、きっと、誰もそう出来なかった。
 見紛うほど、あなたの翼は、美しかったから。

 美しいものは、泡沫と消える。

 あなたもその定めから、逃れられなかっただけのこと。
 そう思わなければ、受け容れられそうも無かった。
 だとしても、生きていて欲しかった。
 他人なのに、遠い所にいるのに、俺はそう思ってばかりだ。
 もう二度と輝かないその翼を、もう一度目にしたいと願うこの心は、きっと、醜いものなんだろう。
 あなたにとっての何にも、俺はなれなかったのだから。


モチーフがあるんですけど、気付く人だけ、気付けば良い、くらいです。

綺麗な人って、ずっと成功して欲しいですよね。
でも、そんな人ほど、どこかで堕ちたりする。堕ちるべき道が、美しい人ほど、たくさん用意されているからかもしれません。
ある意味で、醜い人の人生の方が、安心で、安泰だったりするんでしょうか。まあ、容姿の悩みはまた別でしょうけど。

何だか最近暗いなぁ。
明るい作品を書きたいです。
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