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『透明なピアノ』

.03 2013 .+*ショートノベル*+. comment(0) trackback(0)
その椅子に、君は座っていた。
白魚のような指で、鍵盤を弾いた。
僕のためだけの音色が、この部屋を満たした。
透明なピアノは、ハンマーが弦を叩く仕草をそのままに映し出す。
その動き全てが、僕への想いを紡いだ。
どの曲をとっても、どれ一つとして同じ順序は存在しない。
君の愛の言葉が、全て違っていたように。

もしかすると、君はここにいるのかもしれない。
今もピアノを弾いているのかもしれない。

君を後ろから抱く。
少しだけぴくっとするけれど、指先は動かしたまま。
まだいけないわ、とさとすように。
それでも愛おしくて、そっと抱く腕に力を込める。
君は鍵盤に触れるのをやめない。

きっと、今はこの部屋にいないだけなんだろう。
僕は彼女が大好きだった椅子に腰掛けた。
部屋に差し込む陽光がピアノを輝かせる。
恐る恐るキーに指を乗せる。
ひんやりとした心地。初めて知った感覚は、彼女が帯びていたものとはまるで違った。
透明なピアノは、それだけでは美しいだけだった。
ついぞそんな簡単な事実に気づかなかった。
このピアノは、想いを音色に換えるだけの装置。
奏でる人の心次第で、悪魔の声色すら出し得る。
透明なピアノは、ただのピアノと何ら変わらない。

「君がいたから、透明なピアノはあんなにも素敵な音を聞かせてくれたんだね」

僕が弾けば、どんなメロディが流れるだろう。
きっとさみしさに満ちた音だろう。
君がいないよ。そればかりを奏でるんだろう。
目には見えない五線譜をめくりながら、僕はゆっくりと指を滑らせ始める。
いつかこの指先が、君がいなくても歩いていけるよ、と歌えるようになるまで。


あとがき

久々の小説投稿です。連載作品は見にくいだろうと思われるので、今後は単発のもの(詩、ショートノベルカテゴリに分類します)のみをブログにアップして、本業も皆さんにお見せ出来たらと思います♪
さて、今作『透明なピアノ』は、少し暗い感じに思えるかもしれませんが、実はそうでもありません。
辛くはあるけれど、前に進みたい気持ち。それを綴ってみました。
それに加えて、透明なピアノって、綺麗だろうな、という思いも込めてあります。少し前はゲーム機などで透明な本体なんかもあって、クリスタルブームがあったりしましたが、あの感覚です。
部品がそれぞれ光の反射を行うので、そこにものがあるのは分かる。けれど、透明、は自然界には有り得ないもので、とても不思議に思える。
そんな人の心を掴んで話さない透明を、神秘の音色を奏でるピアノが持った時、それは果たしてどんな美しさを手に入れるのだろうか。
もしあるならば、是非とも見てみたいものです。
『透明なピアノ』で、少しでも何か感じていただければ、幸いです。


コメント、感想、お待ちしてます♪
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