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『その手、触れ合えなくとも』

.08 2013 .+*ショートノベル*+. comment(0) trackback(0)
 俺たちの愛は禁じられた。
 音だけが通り越える壁を境にして、二人の手は、二度と触れ合うことはなかった。
 初めて壁が敷かれたその日、彼女は長い長い話を聞かせてくれた。
 互いを愛しあいながらも別れた二人の物語だった。
 終生愛の念を抱いたにも関わらず、二人の距離は遠ざかったと言う。
「二人はね、いつも一緒だったの」
 空を覆うガラスが、満天の星空を映す。
 彼女の言葉だけが、俺の耳に届いた。
「別れを知らない二人に初めて訪れたのが、永遠の別れだったなんて、悲しい話よね」
 きっと、俺たちは別れはしない。
 この距離は、いつか戻るための距離なのだろう。
 彼女の言葉は、そう言いたいようだった。
「ああ、そうだな」
 俺の言葉が、その想いを穢さぬように。
 ただ、頷いた。
 彼女の物語は、幾日も、幾月も、幾年も続いた。
 それは千夜一夜よりも長く、たった一人のために紡がれた物語。
 俺はひたすらにそれを聞いた。
 彼女の声に、耳を傾けた。
 星の位置をいよいよ覚えてしまった頃、俺は口を閉ざした彼女に、ある物語でも、を話し始めた。
 一人の女を、いつまでも愛し続ける男の物語。
 男と女の間には、橋のない深い渓谷があった。
 迂回しようにも、男には町を出る術がなかった。
 彼女が町を離れると聞いた時、渓谷よりも深い悲しみを感じた。
 だが、男は愛することで彼女を近くに感じることが出来た。
 それ故に、男は彼女への想いを捨てることがなかった。
 男は女に再度逢うことは出来なかった。
 けれど、男の最期の顔には、涙の跡は見られなかった。
「そのお話、女の人には、愛はあったの?」
「さあ、それはどうだか。この話は人から聞いたものだけれど、そこについては一切聞かされなかったよ」
 嘘をついた。
「そうね。私も聞いたことがないわ。でも私なら――」
 知っていたから。彼女がこの話を知りながらも、口にしないんだと。
 この物語は、おそらく一方通行だから。
 女が町を離れたのも、向こう側で良い男と巡り会ったからだ。
 哀れな男はそんなことを知りもせず。ただ女を愛した。
 それは、いわば愚者の為せること。
「彼を愛するわ」
 俺が愚者なのか、はたまた許されぬ二人の一方なのか。
 どちらなのかを、知りたかった。
「ねえ、今日はもう寝ましょうよ」
「そうだな。明日はまた話を聞かせてくれるか?」
「ええ、もちろん」

 今でも時々、最後の夜を夢に見る。
 無機質な壁にもたれかかり、俺は彼女への物語を繰り返す。
 彼女は今も彼を愛しているだろうから。
 俺もまた、彼女を想い続ける。



今回も少し暗くなってしまいました。
いつだったか、俺の作品の本質をすぐに見抜いてくれた人がいました。
あの頃のままのような気がして、まだまだだなと感じてしまいます。

さて、今作は愛について一つの考えを示したものになります。
自分自身でも色々思うところがあるので、時に相反することを謳う作品もあるだろうと思います。
感想なんかは気軽にコメントやサイトのメールフォームに書いていただければ良いのですが、決してこれだけが美徳だという考えを持っている訳ではないとだけ把握してもらえるとありがたいです。
筋の通ってない、って批判する人もいるんでしょうね、それでも。
恋愛小説ばっかり書いているわけですが、その大概が音楽を通して見た恋が多いと思います。
恋愛小説や少女漫画なんてのはほぼ読んだことがありません。
ジャンルとしての恋愛作品は決して好きってわけではなくて、どちらかというと描き出す時に不思議と中心になることが多いんです。
まあ、今作は音楽も関係ないんですけど……。
正直、どこから湧いて出て来たの、です。
人生のどこかでインスピレーションを受けてはいるんでしょうね。
そんな摩訶不思議があるから、俺は小説を書くのが好きです。

商品紹介したり日記書いたり小説上げたりとなかなかむちゃくちゃですが、応援してやってください(笑)

感想、コメントお待ちしてます。
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