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アナスタシア・クライ

.20 2014 .+*ショートノベル*+. comment(0) trackback(0)
 世界が、凍りつく。

 そう知った世界。

 何が、どうなって。それすらも分からないまま、ただ、あるがままを受け容れざるを得ない。

 世界が終わってしまうその瞬間を、誰だって予想していなかったし、ましてや対応することなど、出来るはずもなかった。

 流されるまま。その通りに、世界は終末の日を、待つしかなかった。

 小国メルニアも、例外ではない。

 まだ二十歳にも満たない王女の名は、エミーリア。

 先代国王の突然の訃報から、彼女はこの未曾有の事態に直面する若き女王になってしまった。

 彼女には二つ年下の妹がいた。名はアナスタシア。

 エミーリアは、姉である自分の立場を強く自覚して、アナスタシアは自由でいられるよう計らった。

 与えられた自由の意味を深く知ることもなく、アナスタシアは大好きな歌を歌い続け、音色を奏で続けた。

 心の何処かで、姉に対する申し訳なさを感じながら。

 歌うことも、奏でることも、全てはエミーリアが教えてくれたもの。

 彼女が誰よりそれを好きだということを、アナスタシアもよく分かっていた。

 それでも、アナスタシアに、小国の女王という大役は、あまりに重責に思えてならなかった。

 確かに、そうであるには違いない。

 古い王政を保ち続けるメルニアでは、女王の背負う責任は実に大きい。

 知らぬばかりの責務に加え、世界終末の日が着々と近づいているという現実は、エミーリアの心をひどく圧迫した。

 けれど彼女は国民のために、王室を支える者のために、そして何より妹のために、その責務を全うすべく全力を尽くした。

 終末の日。彼女は全国民に語りかけた。

 希望を捨てないで欲しいと。これから何が起こったとしても、やさしさと慈しみが、人間の心を温めてくれるのだと。

 永遠の冬に囚われるのだとしても、人の心に宿った灯火が、いつか氷を溶かすだろう、と。

 最後の最後まで、エミーリアは言葉を発し続けた。たった一人残された妹、彼女を想いながら。

 流麗なピアノの音色の如く、世界は凍りついて行った。

 それは神秘的で無機質で、何より、命の輝きに欠けていた。

 アナスタシアはひとり、そんな世界に取り残された。

 何がどうなって、どうして。

 何も分からないままに、彼女は銀世界にぽつりと残される。

 何よりもやさしく、神々しく笑みを浮かべる姉の姿。

 氷の彫刻のようなそれは、まぎれもなく彼女のよく知る実の姉そのものだった。

 彼女は叫ぶ。大切な、大切な姉の名を。

 何もかも押し付けて、押し退けた罰なんだ。

 アナスタシアはそう感じた。そうでないと思えるほど、アナスタシアは強い人間ではなかった。

 彼女は泣く。大切な、大切な姉の前で。

 知っていたのに。気付かないふりをしていた。

 姉が毎夜毎夜、何より好きだったピアノに頭をもたせかけ、泣いていたのを。

 たった二つしか年の変わらない少女が、自身の何もかもを脇に捨て、他者のために生きることを決めた。

 ほんの少しでも、痛み分けするべきだったのに。

 許して、こんな私を、どうか……。

 姉は変わらずやわらかな笑みを浮かべたまま。

 その裏に、どんな心を抱えていただろう。

 こぼした涙が、地面に落ちる度に凍っていく。

 いつしか空っぽになった心で、アナスタシアは思った。

 それでも彼女に出来ることは、歌うこと、それだけで。

 歌うこと。それだけが自身に出来ることなら――

 命の鼓動の消えた世界に、たった一つ、響く歌。

 氷の城から、それは広がっていく。

 氷の女王、アナスタシアの歌が。


今書いている歌詞、『アナスタシア・クライ』のバックボーン、ノベル版、といった感じの位置づけの作品です。

永遠の冬、というと俺はすぐにナルニア国物語の一番最初を思い出します。
雪の女王、でしたか、名前はうろ覚えですが、あの話が、とてもとても印象的で。
森がすぐ近くにある状況に住んだことがないので、あの雪の世界の中での発想というのはどうにも難しいのですが、そこにファンタジックな要素を取り入れて、そして世界の終わりという、何とも大層な内容を織り交ぜて書いてみました。

当初のタイトルはアナスタシア・なんちゃらだったのですが、クライに泣く、叫ぶの二つの意味があることから、こういったタイトルになりました。
ロシア風の名前ですが、ロシアは関係ないです笑

どうにもこういった類の作品に言葉を付け足すと蛇足になってしまいそうなのでここらにしておきますが、俺はなかなかこの作品が今後もっともっと好きになって行きそうです。
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