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ある呪われた者の夢

.29 2014 .+*ショートノベル*+. comment(0) trackback(0)
「なあ、一つ聞いても良いか」
 妙に落ち着いていた。
 これから殺されるって言うのに、俺は凶器を振りかざしたそいつに尋ねていた。
「これから死にに行く野郎が、俺に何を聞きてえってんだ?」
「死にに行くからこそ、俺は俺が死ぬ理由を尋ねたい」
「なるほどな。そいつぁ簡単だ。お前は俺が泥棒を働いてる現場を見た。だから俺はお前を殺さねえとお縄にかかっちまう」
「何も殺すことはないだろう。俺が喋れないようにすれば良いだけの話だろう。万が一この後の人生であんたが捕まることがあっても、刑は軽く済む」
「命乞いにしちゃあ落ち着いて話す野郎だ。だがな、世の中にゃあどれほど周到に用意しようが敵わねえもんってのがある。この世のお偉方ってのは人殺しと同じほど残酷な野郎だ。お前の口なんぞすぐに割らせちまうだろうよ」
「なるほどな。それで、物言わぬ屍にしよう、って魂胆か」
 自分でも、この落ち着きぶりは気持ち悪く感じられた。
 しかし、逆に何か、未来への希望さえ感じる気がした。
「だが、一つ気になるんだが、お前は俺を殺せるのか? 殺しに慣れてたりするのか?」
「初めてだな。人を殺すのは。だが俺もお前と同じだ。恐ろしいほどに落ち着いてやがる。お前を殺すのに一欠片の躊躇だって見せはしねえだろうよ」
「随分と自信があるんだな。なら最後にもう一つだけ尋ねたい。俺をどうやって殺そうと思っているのか、丁寧に教えてくれないか。地獄で知り合いに会った時の話のタネにしたいからな」
「どう、ってお前、見て分かるだろうが。この右手に持ってるナイフをお前の心臓に一刺しだ。それでお前はこと切れる」
「つまらないやり方だな。まあ、初めてだって言うなら、そんなものなのかね、普通は」
「そろそろ殺っちまって良いか? よもや時間稼ぎだったりしちゃあ困るからな」
「安心しろ、そんなつもりは毛頭な――」
 そうして、男の腕が伸び、俺の心臓にはナイフが突き刺さる。
 男はきっと、初めての感覚、つまり違和感や恐怖心に襲われ、そして、〝何だ、こんなものだったのか〟と思い始めていることだろう。
「いから。だって俺は、お前に殺されたりしない。お前なんかに、殺されるほど、楽に死なせてはもらえないんだ。死なない、ってことは、一種生きるものにとっての罰らしいな。俺に呪いをかけた天使は、そう言っていたよ」
「な、なんで死なねえんだ、お前……」
 突き刺さったナイフは下に落ち、男の顔には悲壮な色が浮かぶ。
「俺は時を止められてしまった。俺にナイフを突き立てたって、肉は切れても、血は出ない。心臓を突き刺したって、もとより動いてないんだ。じゃあどうして生きてるか、って? さあ。少なくとも、生きてはいないんだろうな。多分、生きても死んでもいない。ただ、存在するだけ。無意味に時の流れの中に置き去りにされただけ。精々、そんなところだろう」
 だから、永劫の時の中で、俺はあるものを探そうと思った。
 この呪いは、確かに恐ろしい。だが、この世界に存在することを許され、しかもそれがこれからも永久に続いて行くと言うのだから、子供の頃からの夢を、叶えようと考えた。
 そのために、ありとあらゆる人間の前で尋ねることにした。
〝どうしても俺を殺せない〟
 そんな想いを抱く人間を。
 理由はどうだって良い。
 ただ、人にそこまでの想いを抱ける者がいるのか、俺はとてつもなく気になった。
 何故なら俺は、簡単に人を殺してしまえるから。
 だから、どうしても人を殺せない。そんな人間に、会ってみたいと思った。
「ただ、それはお前では、ないようだね」
 そう。こうやって。
 悪意を持って触れると、次の瞬間には、灰になってるんだ。
「存在し続ければ、いつか会えるのかな」
 俺にとっての、この世界にいる意味。
「俺を殺せない。そんな人間に」


不思議な作品です。
俺の作品では珍しい部類です。
なんじゃこりゃー、って人には、なんじゃこりゃー。そんな話ですね。

深く書けばとても興味深いものになりそうです。
どうしても人を殺せない。そんな人間は、この世にいるんでしょうか?
不思議なテーマながら、気になるものではありますね。いやはや。
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