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ミカエルの瞳

.08 2015 .+*ショートノベル*+. comment(4) trackback(0)
 その聖像は剣を構え、もう片方の手で魂を秤っていた。
 涙を浮かべる私を見て、天使は何も言わなかった。
 まるで私が救いを求めるまでは何もすまいとでも言いたげに。
 私は――
 どうされたいのだろう。
 悲嘆に暮れた。それは真実で。
 悲しみに染まる私がいたのは嘘じゃない。
 私にそんな想いを抱かせたのは彼。
 だけど彼に対して色々な感情を抱くことを良しとしたのは私。
 私が彼を好きでい続けたから。
 私は彼にココロを支配された。
 彼がこの髪を撫でてくれたら嬉しくて。
 彼が他の子を見ていたら苦しくて。
 彼に逢えたら心が弾んで。
 彼と別れたらこうして泣いて。
 何でもない人になら、決して抱かない想い。
 彼はただの悪人?
 私を救って。彼に罰を与えて。
 目の前の聖像にそう願うのは正しいこと?
 それで私は幸せになれるの?
 かつて愛した――嘘、私、今でも彼が好き――人の不幸を望むことが、私を幸福に導くとは思えない。
 私の心は一秒ごとに悪意に染まって行く。彼が×んでしまえば良い。そうとまで思ってしまう。
 ああ嫌だ。彼と一緒にいて笑っていた私が死んで行くのが分かる。
 彼との思い出が焼け焦げて行く。
 隣でピースサインをする私の顔が歪む。
 こんなことになるなら、好きにならなきゃ良かった。
 囁くのは、悪魔のような私。ううん、私は堕ちたの。かつて彼の幸せを願った私は、今じゃ刻一刻と黒へと染まる私に。
 そう、天使のあなたが打ち砕くような存在に。
 ああ、どうか、今、私を天に召して下さい。
 彼を想う心が全て彼を憎む心に変わる前に。
 未来は分からないけれど、もしかしたら、彼よりももっと好きになれて、私を裏切る――ああ、もうそんな言葉しか出て来ない。嫌だな――ことなんて無い人が出来るのかもしれないけれど、彼を呪った私が幸せになろうとするのは間違っているだろうから。
 来世ではもっと上手くやるから。
 彼に見捨てられないような私になるから。
 どうか今ここで、私に裁きを。
 聖像は動かない。空から光が差すことも、天使が舞い降りることも。
 信仰の無い私が願ったところで、神の元へと願いを届ける存在はいない。
 それでも願うのは、正しさにすがりつく弱い私。
 どうか、聞き届けて。
 私、悪い子になりたくない。
 悪い私は何をするだろう。
 堕ちた私は自他問わず闇に葬り去るだろう。
 不幸せを撒き散らす堕天の使い。
 醜女になり下がる。
 ああ、黒に染まるのが分かる。
 私を救ってくれないあなたへの憎しみもふつふつ湧いて来た。
 早く早く。今すぐ、ここで×して。
 あなたの心臓へ刃を突き立てて唇を貪ってしまいそう。
 私には私を×す勇気は無いから。
 ああ、ああ、ああ、ああ。
 これこそが罰だと言うのね。
 そう、私は恨む人。
 悪意の中に生きる存在。
 終わりは苦しみ抜いた後に。
 あなたの天秤は揺らがない。
 全て見ていたのね。
 こうして私が堕ちること、それさえも見据えていたのね。
 あなたの瞳には、全てが正しく映ったのね。
 それなら私、彼を恨むわ。
 呪い殺して、醜く生きていくわ。
 だってあなたも私を救ってくれなかったから。


四年前、もうそろそろ五年前になるのかな、高校生になりたての頃。
俺には恨む人がいた。
恨みって、自分に酷いことをした人にもそうだけど、そんな人よりも、かつて好きだったのに、そういられなくなった人に対しての方が、よっぽど強く抱くものだと思う。
まあ、そういう人がいて、当時の作品(あれは俺のUSBメモリの中にだけで今も生きてる)は、こんな作風ばかりだった。
俺が前を向いて歩き出そうとするのはもう少し後のことで、その中での変容が恋愛小説を書かせることになるんだけど、そうなる前の俺は今よりずっと乱暴に誰かの不幸せを願ったりして。
今は直接そう思うような人がいるわけじゃなくて、少し離れた距離でテーマ性を描いたりするから、厳密にはあの頃とは違うんだけど。
朝からこんな作品を書くなんてどうかしてる、そんなことを思いつつも、これを書く俺のココロは別に普通と言うか。この後別の明るい作品を書けるし、沈んでたりはしてなくて。
でも少し、しんみりしてるのかな。
このさみしさは好きにはなれないけど、嫌いにもなれなくて。
さあ、大学に行かなきゃ。
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2015.01.08 10:54
碧海愛
相手の幸せを願えるようになったらゼロ、かあ……それは俺は違うと思うな……思いたい、と言いたいのかもしれない。まだその境地、俺は至っていないけれど、相手のことを単なる過去としか形容出来なくなることがゼロになるということで、相手の幸せを願えるようになることは、より新たな自身の変化であって、それはきっと、プラスに部類出来るものと言えないかな。まあ、まだ分からないけれど。
2015.01.08 14:10
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2015.01.08 17:24
碧海愛
なろうとするかどうか、それだけだよ。
それに、黒さを知っている方が、より白さが分かるから。黒さを知らない白は、自分が灰色に近い白なのか真っ白なのかは気付けない。
大丈夫だよ。
2015.01.09 07:47

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