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輪廻の先のあなたに

.07 2015 .+*ショートノベル*+. comment(0) trackback(0)
 あなたの描いた物語。
 世界にたった一冊の物語。
 病床で臥せりながらも、あなたは筆を休めること無く書き続けた。
 自身の命がそう長くないと知ってからも、あなたは原稿用紙にただひたすら、ただひたすら書き続けた。
 俺はその傍で出来上がったページを一枚一枚手に取りながら、目を通し、感想を述べ、先のページの下に重ねた。
 日に日にやつれ衰えるあなたを見て、手を休めるように言ったこともあった。
 それでも、あなたは一度として首を縦に振ることは無かった。
 最早それでさえ負担になり、あなたの命を縮めることになると分かった頃、誰もが止めるように言った中、俺はあなたにそれを続けさせてやりたいと主張した。
 あなたが一番生き生きとしていたのは、間違いなく、あなたが筆を執っていた時だから。
 頬こけた顔に浮かぶ、真剣な眼差し。
 感想を早く早くと急かすその顔には、不安と期待。
 俺はあなたの世界でたった一人のファン。
 あなたは、世界にその才能を認められるより先に、その命の灯火を尽きさせてしまった人。
 あなたが描いた物語を、世に広めるべきじゃないかと尋ねた時、あなたはそうなるべきなら自然とそうなる、とだけ言って、俺に最後の原稿用紙を手渡した。
 俺は受け取った原稿を手に、よしみのある友人に世界でたった一冊の出版を依頼した。
 それはあなたが亡くなる前日に完成した。
 あなたはそれを手に取って、パラパラとめくってから、「私が亡くなって久しくなってから、私を思い出すように読んでみて」とこぼした。
 俺にはその真意が分からなかった。
 けれど、今ようやくその意味が分かる。
 あなたが生きた証。
 あなたと過ごせた幸せ。
 この物語を読むことで、あなたがよみがえるようで。
 俺は涙を流しながらも、あなたが遠く離れてしまったことを悲しみながらも、あなたは決していなくなってはいないのだと、静かに悟った。
 この世には永遠なんてものは無いのかもしれない。
 けれどここにある物語には、確かに、あなたがいつまでも存在し続けている。
 俺はこれからも、一枚一枚をめくりながら、いつか輪廻の先であなたにもう一度出逢いたいと、切に願う。
 あなたの次回作を、期待しながら。


ある素敵な漫画家さんが先日お亡くなりになりました。

その作品をもう一度読み返して、時が経てば経つほど、鮮やかに世界が広がるのを感じて、筆を執らずにはいられなくなって、この作品を書きました。

もちろん、その方は漫画家さんですし、作品もアニメ化した大御所さんであり、俺とは直接の関わりも無い方ではありますが、直接にその想いを書くのは、どうにも俺らしくないもので、こうしてアレンジした上で、お悔やみの代わりとさせていただいた次第です。

名前も挙げない非礼をお詫びしつつも、ご冥福をお祈りし、作品で最後に記した通り、輪廻の先、あなたが描かれる次の物語を、楽しみに待っています。

どうか本当に安らかに、お眠り下さい。
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