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in the frosted glass

.02 2015 .+*ショートノベル*+. comment(0) trackback(0)
 あなたの姿が見える。
 かつてこの瞳があなたを映したように。
 あなたの姿が見える。
 触れようとして、手を伸ばして、透明なそれにぶつかる。
 押し付けた手は、緩やかに平らになって行く。
 気が付けば私は、身動きの取れないすりガラスの中にいた。
 あなたを透明なガラス越しに見つめるだけ。
 私の望んだ、私とあなたの世界。
 でもそれは、私とあなたとの世界ではない。
 どうしてこうなってしまったんだろう。
 私の言葉はあなたに伝わらない。
 私の想いはあなたに伝わらない。
 高望みなんて、していないのに。
 ただ、あなたといられる世界、それだけを望んだのに。
 望んだ通りに与えられた世界は、こんなにも重苦しい。
 私の幸せは死んでしまった。
 あなたの幸せは生み出せなかった。
 曖昧な気持ち。進退を決められない心。
 でも、それが私たち大多数の恋する人の常ではないの?
 涙の行方は分からない。
 あなたを見つめることだけを許された、不自由な世界。
 あなたが笑う時も。
 あなたが泣く時も。
 あなたが喜ぶ時も。
 あなたが悩む時も。
 私はあなたを見つめ、想うだけ。
 それだけでも良い、と願ったから。
 せめてそのくらい、と祈ったから。
 聞き入れられた、叶えられた想いは、それでも私を苦しめる。
 私はきっと、あなたのものになりたくて。
 私はきっと、あなたを手に入れたかった。
 それを邪な気持ちと呼ぶなら、朝陽は昇らない。
 訪れた夕闇に支配され続ける世界。
 眠れない夜も残酷に明けて行くから。
 この心は、穢れなきものだとまでは言わなくても、清らかだと思っていたのに。
 望むばかり。願うばかり。そこで終わりになってしまうのが、私の定めだと言うの?
 後一歩、後一歩。
 そう求め続ければ、あなたのいた世界を壊してしまう。分かっていたから、私はあなたを執拗に求めたりしなかった。
 あなたの近くにいられたら良い。
 そう心を閉ざしたのに。
 結局私は、そんな風には望んでいなかったと言うの?
 今の私は、世界が壊れても良いと思っている。
 あなたを手に入れる未来も。
 あなたを失ってしまう未来も。
 平等に訪れることを願っている。
 このすりガラスを抜けられたら。
 でもきっと、私はその先の未来で、せめてあなたの近くにいられたら、と願うんだろう。
 あなたを手に入れられたのだとして、私は思い、悩み、煩うんだろう。
 それなら私は、ここにいた方が良い。
 あなたを見つめていられる、このすりガラスの中に。
 ここはとても静かで、いつかこの心のざわめきも、消えてしまうだろうから。
 きっと私の居場所はここなんだ。
 このすりガラスの中なんだ。


手を伸ばしても、届かない。
そこには、こちらからは見えて、あちらからは見えない透明なガラスが聳え立っているから。
それは、確かに自分が願った境界。
誰も不幸せにしない、けれど誰も幸せにしない防壁。
でも、不幸せを知ってしまった彼は、彼女は、幸せを生むことより、不幸せを生まないことを優先する。
もし今度、不幸せを生んでしまえば、自分が保たないことを知っているから。
幸せになるには、代償が要るんだ。

それでも涙は、止まらない。


重苦しいテーマ。
だからこそ美しいのかもしれません。
ハッピーエンドを基本的に書きますが、短い中でそれをするとWhat!?ってなりそうなので、たまにはこんな終わり方もしてみようと思いこんな仕上がりにしました。

自分に、「これで良いの?」
と、問いかけながら。
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